北緯1度通信

シンガポール在住の日本人です。日々の雑感、趣味の話など思いつくまま書いてみます。

Entries

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • [No Tag]

唐沢俊一のマンガ論検証(1) UA!ライブラリー・1「奇形児」

UA!ライブラリーは、貸本漫画を復刻する目的で、1996年から2004年にかけて15冊発行された同人誌です。現在もここで入手可能になっています。

http://www.tobunken.com/ualib/uatop.html

当ブログでは、これらに掲載された唐沢俊一の漫画論を検証していきます。全15回を予定してますので気長にお付き合い下さい。

UA!ライブラリー・1「奇形児」は、奥付によると1996年9月に日本資本漫画保存会より発行されました。通販などの問い合わせ先として鹿野景子さん個人宛ての住所が記載されているので、実体は鹿野景子さんの個人誌でしょう(巻毎に奥付がおもしろい事になって行くのですが、それは個別に記述します)。

それでは、最初の文章から。同書6ページから9ページまで

とても変なまんが
第二回:好美のぼるー闇の巨匠


...あのー、これってSFマガジンの連載の丸コピーじゃないですか!
それも、初出誌の記述も何も無しのノークレジット。引用ですらない単なる流用。著作権法的には完全アウトと思います。いい度胸だ。この連載は単行本になっているのでここでは扱いません。はい次。同書に収録された「奇形児」の後書き解説です。

同書61ページ全文。原文は縦書き。


奇形児

1996年4月、好美のぼる氏は亡くなった。僕(唐沢)はその直前、ネスコ/文芸春秋から出版した「カルトホラー漫画秘宝館」で、氏の作品「心臓の妖怪」「尼寺の妖怪」を復刻する事を企画し、病気療養中の好美氏にかわって奥様の快諾を得ていたのだが、奇しくも死の床にその見本刷りが届き、枕頭に供えられたという。氏は晩年、自分の過去の業績を一切、忘れていたというが、それでも、枕元に作品が供えられたということで、「作家」としてこの世を去る事ができた。
「喜んでいると思います」
という奥様の言葉を信じたい。で、その供養に、果たしてなるかどうかわからない作品であるのだが、ここに氏の代表作のひとつ、「奇形児」を復刻する。テキストは懐古館ろびんの片山健統氏の所蔵になるものを用いた。
この作品、原やすみ名義で発表されている。原やすみとは好美のぼるが一時使っていたペンネームである。この時期、好美センセイはひと月に平均して単行本二册、雑誌読み切り一本という無茶苦茶なペースで仕事をしていたから、名前を使い分ける必要があったのかもしれない。好美センセイの本名は尾原三好という。好美のぼるの好美は名前の方の三好を逆さまに読んだもの、原やすみの原は、尾原の原をとったもの、なのだろう。それにしても、この「奇形児」。どうしようもないくらい、すくいのないストーリィである。最初はけなげに、自分の肉体の奇形化に立ち向かっていった主人公が、手も足もなくなってダルマみたいな姿になったとたん、そのショックで気が狂ってしまう。この作者は、人間性というものをしんじていないかのごとくだ。これが好美作品の特色のひとつ、と言えれば、それはそれで論としてまとまるのだが、別の作品ではこの人、どんな姿になっても変わらない人間の真心、みたいなテーマの作品も描いているから始末に悪い。一貫性がないのである。
たぶん、月産四百ページという重労働の中で、そんなテーマ性などかまっちゃいられなかったのだろう。この作品も、そんな無茶苦茶なスケジュールの間に描かれた、描きなぐり的作品である、として読むのが最も正しいのだと思う。
しかし、ここまでいいかげんに描かれると、そこに何か内容があるのではないか、とかえって誤読したくなってくるのも人情である。ことに生まれた弟の手足が長く、
「ヒロコ、ヒロコ」
とつぶやきながらクモのように町を歩くところなど、悪夢を見ているような印象だ。そして、子供らを探しに町へ走り出る母親の絵のすごいデッサン!わたしは、ここのシーンを見て、てっきり、姉の手足が短くなり、弟の手足が長くなって、次は母親の首が長くなったんだと思った。たんなるデッサン狂いなんだけど。
ストーリィのシュールな展開も、何とも言えない。セリフ回しの異常さも独特だ。そして、ラストのオチのまあ、何たる・・・・・・。
とにかく、読んでほしい。そして、その出来具合に、笑って欲しい。この作品は、そういう読み方をされるためにあると思う。
「笑ってよ/思い切り笑ってよ/いいのよいいのよ/あなた方が笑うだけ/あたしも笑うわ/笑って笑って笑い抜くわ」
主人公のこの叫びは、この作品自体の叫びなのである。


”枕元に作品が供えられたということで、「作家」としてこの世を去る事ができた。”ってどういう理屈なのか。作品では、40ページ以上に渡って主人公が徐々に発狂して行く様子が描かれている。なので、”ダルマみたいな姿になったとたん、そのショックで気が狂ってしまう。”というのは違うと思う。別の作品で”どんな姿になっても変わらない人間の真心”を描いているからというだけで、一貫性がない、テーマがない、いいかげんと責め立てる。まさに”追討”。ちなみに、”別の作品”の作品名はない。私は好美のぼる作品は大して読んでいないので、そんなものはない、と言い切れないが、そう言う事を書くなら作品名くらいあげて欲しい。結局、時間がないのでストーリーもなにも構っちゃいられずにただ描きなぐられた駄作だが、そのひどい出来具合を笑え、と言っているのだ。あんまりだと思う。
つまらない事だけど、”そんな無茶苦茶なスケジュールの間に描かれた”って、他に本業があったのか、好美のぼる?

同書62ページ全文。同じく原文縦書き。


火葬       旭丘光夫

怪作、というより他に言葉がない。展開のあまりの唐突さがこちらの脳ミソを混乱させる。だいたい、登場人物の名前が、”幽子”と”川死”というところからしてスゴい。さらにその親父を文無しにして殺した女が、あんなあやしげな電話一本でノコノコ出てくるというところがわけがわからない。それで、女を殺したあとの男がノンキに登山などするところがますますもってわけがわからない。女が幽霊でないとすると、なぜ大やけどを負った体で山にまで登ってこられたのかも、さっぱりわけがわからない。
「うらみますぞ!」
などという江戸時代みたいな言葉使いをなんでするのか、いよいよわけがわからない。男の方も、写真に出刃包丁を突き刺されて、
「XXGZLXY」
などとうめくが、いったいどういう意味なのか、まるきりわけがわからない。
これだけわからないところがあってなお、いや、それ故にこの作品がこちらをひきつけるのは、そこにマンガの根源とも言える、猥雑なパワーがあふれているからだろあう(ママ)。ストーリィのまとまりなどクソくらえとばかりの有無を言わさぬ迫力、それがマンガの命であったはずだ。この作品にリキが入っていることは、その表紙にわざわざ”ザ”をつけた、”ザ・オリジナル作品”という肩書を作者がつけているところからもわかろうというものだ。もっとも、その後の「特殊技術・富田登美雄」というのはやっぱりわけがわからない。

この作品のどこに特殊技術が使われているのだろうか。

そう言えば、この作者名だが、劇画家の旭丘光史に似ている。果たして同一人物なのだろうか(だ、という話を聞いたが)。これもわからない。まったく、わからないだらけの作品であります。


うーん、唐沢俊一ってたしか1958年生まれだったよな。それならば昔の漫画の文法くらい心得ていそうなものだが。
"XXGZLXY"や"うらみますぞ!"は別に変ではない。前者は言葉にならない声、という奴で最近は記号で表現されるアレであるし、後者は、"うらめしや"の同類である。幽霊は妙に時代がかった言葉遣いをしていたのだよ、唐沢センセー。などと大真面目で指摘するほどの事じゃない。ようするに”わからない”づくしで無理に文章を纏めただけの手抜きなのだ。
最後の、別の劇画家に名前が似てる、同一人物だという話しを聞いたが果たしてそうなのか、ってそうなんだろうよ!

今回始めて唐沢俊一の文章を入力しましたが、ひらがながやたら多くて大変でした。内容は、想像以上にいい加減でちょっと目眩がします。ここまで読んでいただいた方、お付き合いいただきありがとうございました。次回は、UA!シリーズ・2「愛すべき猫と兄貴」を取り上げます。
スポンサーサイト
  • [No Tag]

*Comment

旭丘光史 

唐沢は2001年7月29日の裏モノ日記に

> さすがに日曜で道が空いていて、二十五分ほどで平岸の霊園に到着。旭丘光夫(光志)の『火葬』(UA!ライブラリー『奇形児』所収)に出てくるのがこの平岸の霊園である。

 って書いているのにねえ。

http://www.tobunken.com/diary/diary20010729000000.html
  • posted by 藤岡真 
  • URL 
  • 2010.12/20 13:20分 
  • [Edit]

Re:旭丘光史 

>藤岡真さん

コメントありがとうございます。日記に書いてあったとは。しかも刊行から5年も経っているのに。ちょっと唐沢俊一を見直したりして(笑)。

  • posted by altnk 
  • URL 
  • 2010.12/20 19:35分 

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。