北緯1度通信

シンガポール在住の日本人です。日々の雑感、趣味の話など思いつくまま書いてみます。

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唐沢俊一のマンガ論検証(7)UA!ライブラリー・7「早く立派なバレリーナ」

唐沢俊一のマンガ論検証七回目です。UA!ライブラリー・7「早く立派なバレリーナ」は、奥付によると2001年11月に前作同様"日本貸本漫画保存会"により発行されています。前作とのブランクは1年3ヶ月です。この月は、UA!ライブラリー・8「うわっ その子 きれい 殺す」も同時復刻されています。通販の申込先は、今回から(株)東京文化研究所になっています。いよいよ本格的に商売を始めたようです。収録作品は、『花ふたたび』、『雪に散る花』、『花は咲かずとも』、『美しのワルツ』、『ふたりのシンデレラ』、『白鳥の夢』、投稿されたカットを集めた『読者の作品展』、『ある冬の日』、『花の友情』の9作品です。唐沢俊一の解説は74ページから77ページまで。最初のページは、扉で、解説は75ページから。上下2段組が1ページ、他は1段で収録されています。前回の半量程度です。では。

本書74ページから77ページまで。原文縦書き。強調引用者。

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神聖お涙バレエ王国
唐沢俊一


少女マンガである。お涙である。しかして、バレエである。ここに、『王道』というものがある。文句あるか、である。

昭和四〇(ママ)年くらいまで、少女マンガというものはコレであった。この本に採録した作品よりはもう少し程度が高いものが主流だったかもしれないが、しかし、まあ、内容は似たようなもんだった。貧しい境遇の主人公と、優しいけれど病弱なママと、どこへ行ったかわからないパパと、つめたい世間といじわるなお嬢様と、ぐれた兄貴と親切な老人と、そして華やかなバレエの世界と、それが全てであった。
何と単純で、そして魅力的な世界だったことか。
なぜ、バレエなのか?
その問いに対する、不正確かもしれないが最もそれらしい答えは、
「バレエの様式性が、一番少女マンガに近い世界だったからだ」
というものだろう。
それは、いつ見ても同じ話が繰り返されていて、それ故に安心感があって、また、同じような話のちょっとした細部に作者のアイデアと描写力が光って、見るものに《通》の楽しみも味あわせてくれた。
言わば、クラシック・バレエの世界だったのだ、お涙少女マンガは。
描く世界が限定されているからこそ、そこには独自の美学が確立されていた。やがて、少女マンガの描く世界は大きく拡大されていくが、しかし、基本はあくまで、お涙という形式に忠実なものであった。
やがて、その形式に飽き足らない、全く新しい感覚を武器にした一派が登場し、彼女たちが、それまでの常識を一変させていく。萩尾望都らをトップとするその一派は、今もなお、少女マンガの世界を大きく広げた天才という名誉を恣(ほしいまま)にしている。私もリアルタイムで彼女たちの才能に接して驚愕したクチであり、決してその功績を否定するものではない。
しかし。
問題は、その改革の嵐により、お涙少女マンガがまったく消え去ってしまったことにある。マンガ評論家たちは、萩尾たち改革派の才能を讚仰することに忙しく、お涙少女マンガを、古く価値のないもの、と捨て去ることに、何のこだわりも感じていないようだ。
確かにそれはマンネリ化が進んでいた。高度経済成長を遂げた日本に、貧しい主人公は不似合いだったかもしれなかった。だが、その形式の持っていた完成度は、決して否定されるばかりのものとは言えないだろう、と思うのである。
ロシア語通訳者の米原万里氏が、クラシックバレエの魅力は、踊りの型がきちんと決められていることだ、と言っている。自由創作ダンスは、その型から脱しようとして始められたものではあるが、
「音楽に合わせて身体をくねらせるだけの、誰もが動かしやすい動作をするものだから、みんな同じ踊りになって、見ている方も退屈だし、本人もすぐに飽きてしまう」
のである。型がきちんと決まってる踊りほど、自己表現も自在だし、踊っている最中の開放感も、満足度も高い。自由であるはずが結局、個性の喪失につながっている今の若者を見て、米原氏はこう言い切る。
「不自由な方が自由になれるのである」
と。現在、少女マンガが低調と言われ、これはという話題作が出てこない状況になってしまったのは、この不自由な自由であるところの《型》を忘れてしまったからではあるまいか。
基礎を失った芸術は滅ぶのみである。芸術において煮詰まった分野が(ママ)活気を取り戻すためには、その最も原始的な、根本の部分に帰り、自らの原点を見つめ直してみることが最も効果的なのではなかろうか。
お涙王道バレエマンガの復活を、少女マンガファンとして、マジに主張するものである。願わくばこの復刻本がその端緒となりますように。

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変なひらがなの癖で入力が大変だったのは前回同様だ。では、短いので順に行きます。

"ここに、『王道』というものがある。文句あるか、である"

ある。"王道"は、楽な道、やりかた。もしかして"本道"と言いたいんですか。

"何と単純で、そして魅力的な世界だったことか。"

今回はそういう作品を選んだだけでは?

"マンガ評論家たちは、萩尾たち改革派の才能を讚仰することに忙しく、お涙少女マンガを、古く価値のないもの、と捨て去ることに、何のこだわりも感じていないようだ"

評論家はわかってない、と。しかし、前回、前々回同様、なぜお涙頂戴少女マンガが消え去ったのか、を全く説明できていない。ここは因果関係をしっかり説明してもらいたかったな。

"米原万里氏が、クラシックバレエの魅力は、踊りの型がきちんと決められていることだ、と言っている。"

原文を探したら、ここで検証済みでした。

"型がきちんと決まってる踊りほど、自己表現も自在だし、"

わかって書いてるのかな。フリージャズが台頭した頃、モードジャズも人気が出たんだけど、何のことかわかるかなあ。でも、

"芸術において"

なんて振りかぶるなら責任取れよ。

"踊っている最中の開放感も、満足度も高い。"

ちゃっかりよく言う。あんたはバレリーナじゃないでしょ。

"現在、少女マンガが低調と言われ"

誰が言ってる。

"これはという話題作が出てこない状況になってしまったのは"

だから誰がどの口で言ってる。話題作なんか2001年に限らずいくらでもある。

"《型》を忘れてしまったからではあるまいか。"

あるまいか、じゃないよ。少女マンガは百花繚乱だし話題作には事欠かない。少女マンガに限らず、どのジャンルでも一個人ではフォローできないほど豊穣なんだ。

例えば、実弟の唐沢なをき氏のフィールドであるギャグマンガをざっと俯瞰するだけで、どれだけかわかるはずだが。

"願わくばこの復刻本がその端緒となりますように。"

だったら、"程度が高い"ものを収録すればよかったじゃなイカ。あ、版権がネックか?さすがに名作を無断復刻はできないよな。

今回は、いつにも増して唐沢クオリティです。過去を持ち上げるためにとりあえず現状を腐す。具体的な作品名は例の如く無し。

次回はUA!ライブラリー・8「うわっ その子 きれい 殺す」を取り上げます。
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*Comment

NoTitle 

始めまして。
この話ですか……。米原万里『真昼の星空』<自由という名の不自由>はたしかに「型」の話なんですが、ここには「クラシック・バレエ」も「自由創作ダンス」も出てきません。唐沢の説明だとあたかも「古典」vs「モダン」の対立であるかのように錯覚してしまいますが、ここで具体的に挙げられている「自由という名の不自由」は、(1)今晩のおかずは何でもいいといって母を困らせる筆者(2)「どんな本でも出してあげます」という奇特な編集者(3)テーマは自由というこの連載(4)型のない自由なダンス、以上であり、実体験を例にした話の流れからいって、筆者がディスコやパーティなどにて「音楽に合わせて身をくねらせる」といった程度の状況を想定するのが自然です。ここでいう「方のない自由なダンス」とは、「自由創作ダンス」といった特定性のあるものではなく、名も無いちょっとした踊りを指しているということです。
とすると、対峙する<一つ一つの動きにいちいち細かく厳しい型があり、それを身につけるのに何年もかかるような不自由な思いをして身につけた踊り>とは、ソーシャル・ダンス、コサック・ダンス、盆踊り、フラメンコ、いろいろ考えられ、特にクラシック・バレエであるという限定に根拠はありません。
ついでにいうと、<自由という名の不自由>の2コ前の<コピーされる娯楽>では、複製が可能なほど表現の型が狭まってしまった現代への批判となっており、「型」についての評価は正反対です。(←ええと、ほら、米原さんは「主張」なんて無い人だから……)
  • posted by discussao 
  • URL 
  • 2011.01/25 18:14分 
  • [Edit]

コメントありがとうございます。 

なるほど。唐沢は米原氏の権威を利用して自分の思いつきを裏打ちしているということですね、同時期の日記と同人誌のコラムで。しかも趣旨が逆とは。
  • posted by altnk 
  • URL 
  • 2011.01/27 02:14分 

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