北緯1度通信

シンガポール在住の日本人です。日々の雑感、趣味の話など思いつくまま書いてみます。

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唐沢俊一のマンガ論検証(8)UA!ライブラリー・8「うわっその子きれい殺す」

UA!ライブラリー・8「うわっその子きれい殺す」はUA!ライブラリー・7「早く立派なバレリーナ」と同時に2001年11月に"日本貸本漫画保存会"により発行されています。通販の申込先はなぜか鹿野景子宛になっていますが実質的な違いがあったのでしょうか。この問題は最後の回でまとめてみます。収録作品は、『魅せられた乙女』、『幸うすき星』、『テレビスター』の3本で何れも好美のぼるの作品です。『魅せられた乙女』以外は、ストーリーがやっとわかる程度にまでカットされているダイジェストです。ページ数が無いなら別に発行すればいいのに酷くなイカ?唐沢の文章は74ページから78ページまで。5ページの半分以上をカットしたもとのコマで埋めていますので実質2ページです。では。

本書74ページから78ページまで。原文縦書き。強調引用者。
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好美のぼるはここから
出発したのだった

唐沢俊一

「うわっその子きれい殺す」
である。このセリフのインパクトを見よ。いや、別のコマではさらに《うわっ》がひとつ増えて
「うわっうわっその子きれい殺す」
になってるぞ。
好美のぼる作品の、奇妙にこちらの意識内にひっかかってしまうセリフ感覚の凄さは、この、『幸うすき星』の、主要ストーリィにさっぱりかかわらない、しかしむちゃくちゃに印象的なこの少女のセリフに全て含まれている。好美のぼる初期作品集のタイトルを決定するにあたり、あまり収録作品群のイメージとは合わないこのセリフをもってきて当てたのは、このセリフの持つ好美のぼる原点的な(ママ)意味合いを尊重したためである。ご理解あれ。
ここに復刻・ご紹介する作品群は、かなりの好美のぼるファンでもたぶん、御存じない作品ばかりである。
なぜ知らないかというと、ホラーではないからである。一応《少女スリラー》というククリになっているものの、ストーリィにスリラー性またはホラー性はほとんどない。ほとんどデビュー作と言っていい『魅せられた乙女』は一応ギャング団などが出てくるが、その他はどれもみな、昭和二〇年代から三〇年代(ママ)にかけて大流行したお涙少女小説の形式をそのまま踏襲した、お涙少女マンガである。
主人公に次々と不幸が襲いかかり、どんどん状況が悪化する。その中で嘆き悲しみながらも、心の美しさを失わない主人公が、最後に幸せを得る、という話である。
以前、『美少女の逆襲』という本で考察したことがあるのだが、お涙少女小説に代わる形で出現したお涙少女マンガは、その構成において、少女小説と大きく異なる特徴があった。
それは《少女の不幸が解決されない話が多い》ということである。
少女小説の場合、どんなに主人公の身にふりかかる不幸が悲惨なものであっても、その最後には、まず九割九分、それらの不幸は払拭され、主人公にはそれまでの不幸を補ってあまりある幸せが訪れる。文字どおりのハッピー・エンドが定番であった。
それに比べ、後発の少女マンガでは、主人公が悲惨な境遇のまま、ついにむくわれない死を迎える、というストーリィのものがやたら多くなっているのである(もちろん、全体的に見ればハッピー・エンドがほとんどなのだが、少女小説に悲劇的ラストがほとんどないのに比べれば、その率は極端に高い)。
これは、戦後まもない、実際に貧しく悲惨な時代の読者である少女たちにとり、主人公の悲劇と自分を重ねあわせる部分が多く、それが最後まで悲劇におわった場合、シビアすぎる、とされたためだろう。やがて昭和三〇年代(ママ)も半ばとなり、読者の生活水準があがってくると、ストーリィを純粋に作り話として楽しむ余裕が生まれ、悲劇を悲劇として割り切って読むテクニックを読者がマスターしてきた。つまりは進化したのである。そうなれば、悲劇の程度はどんどんエスカレートさせた方がいいに決まっており、かくて少女たちは非常(ママ)冷酷なる作者たちにより、悲惨さの極地に突き落とされることになっていったのである。
そういう作品にくらべると、好美のぼるのこれらの少女マンガ作品は、どれも甘い。さまざまに悲劇的状況は主人公に襲いかかるものの(ママ)、最後はいずれもハッピーエンドで終わっている。
貸本少女マンガの作家たちの年齢層はいずれも若く、十代の人たちがザラにいた。それらに比べ、やや年齢的に上であった好美のぼるのセンスは、やはりちょっと古かったのである。
しかし、だ。好美のぼるは努力の人である。後に怪奇モノの分野で発揮される、世上で話題になった事象をすぐさま自作に取り入れるジャーナリスティックな感覚(パソコンをマンガの中に登場させた最初期の作家が好美のぼるなのだ)は、テレビスターという新しい人気者の世界をいち早く描くというところにも表れている(少女小説時代には、スターと言えば映画のそれであった)。
さらに、初期作品に顕著な、動きの分割の手法も、後の好美作品の、登場人物の独特の決めポーズを生み出す習作、といった感じがして興味深い(例えば『幸うすき星』でスミ子がこきつかわれる場面のあたりや、『魅せられた乙女』の、マリの好太郎への説得シーンなど、まるでアニメを思わせる)。
そしてもうひとつ付け加えれば、今ではとても雑誌媒体に発表できないようなアブない用語や描写を多用するクセ(「うわっその子きれい殺す」は言うまでもなく、『テレビスター』の若草学園の子たちの描写など)も、すでにこの時代から顕著なのであった。
やがてお涙少女マンガは、少女マンガそのものが雑誌媒体に発表場所を写していったこともあり、また、矢代まさこ、峰岸ひろみといった新感覚派の台頭もあり、次第に衰退していく。好美のぼるもまた、仕事の場をよりストレートな怪奇ものへと転進せざるを得なくなった(ママ)。だが、その怪奇ものの場で、好美のぼるの作風は、それまでどこか場違いさを感じさせていた少女マンガとは比べものにならぬほどいきいきと開花し、貸本怪奇マンガの帝王の座を確保するのである。
だが、その出自を主女マンガに置いていた好美は、貸本時代全般を通じて、自分の作品に『少女スリラー』と冠することを忘れはしなかった。あるいは絵柄などから、少年もの劇画に場を移していれば、と思えるところもあるのだが、律儀な彼は生涯、自分を少女モノ作家として位置づけていたようだ。そして、怪奇モノに場を移して初めて、好美のぼるは、その作品に、先程述べた、主人公を徹底して悲劇のままに終わらせるテクニックを取り入れる。それは代表作である『夜光虫少女』や『呪いをあなたに』を読んだ方ならあきらかだろう。
好美のぼるの原点がタップリつまったこれら初期作品を、どうかお楽しみいただきたい。


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変なかなの癖で入力に手間取ったのはいつもの通り。"ハッピー・エンド""ハッピーエンド"が混在してるし、それ以上に文章が壊れているのが目につく。

"さまざまに悲劇的状況は主人公に襲いかかるものの"

てにをはが変。それと"状況"は襲いかかるものか?

"仕事の場をよりストレートな怪奇ものへと転進せざるを得なくなった"

仕事の場を転進って。"仕事の場"を抜けば普通の文になるのについ書きすぎたか。

"もちろん、全体的に見ればハッピー・エンドがほとんどなのだが、少女小説に悲劇的ラストがほとんどないのに比べれば、その率は極端に高い"

そりゃあゼロに近いものと比べたらほぼ無限だよなあ。で、"ついにむくわれない死を迎える、というストーリィのものがやたら多くなっているのである”と、"ハッピー・エンドがほとんどなのだが"ってどっちだよ。少女マンガもハッピーエンドがほとんど、って事にやっと気がついた、ということですか?これまで主張して来たことを随分簡単に台無しにするなあ。と思うと、続くセンテンスでは厚顔にも同じ主張を繰り返している。

"やや年齢的に上であった好美のぼる"

好美のぼるは大正13年生まれで、『魅せられた乙女』が描かれたのは昭和40年だから既に42歳ということになる。やや上、どころじゃない。

"今ではとても雑誌媒体に発表できないようなアブない用語や描写を多用するクセ"

"クセ"はないだろう。現在と倫理基準が違うのだから当たり前の事ではないか。

"自分の作品に『少女スリラー』と冠することを忘れはしなかった。"

これって作家が自分で付けるものとは思えないのだが。

"怪奇モノに場を移して初めて、好美のぼるは、その作品に、先程述べた、主人公を徹底して悲劇のままに終わらせるテクニックを取り入れる。それは代表作である『夜光虫少女』や『呪いをあなたに』を読んだ方ならあきらかだろう。"

好美のぼるの怪奇マンガにもハッピーエンドは多い。『妖怪樽のぬし』、『尼寺の妖怪』、『妖怪アパート』、『耳売り少女』等々。私が読んだ中からですらまだまだ挙げられる。"テクニックを取り入れる"ってそういうものを描くようになった、というだけの事。どうでもいいけど代表作というなら、少女フレンドに連載された『にくしみ』がふさわしいと思う。これもハッピーエンドだ。

以上。例によって書く事が無いのに無理矢理書いたもののようです。

次回はUA!ライブラリー・9「ねずみ娘」を取り上げます。
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